T.A
2012年キャリア入社
Fashion&Lifestyle事業部
スーパーバイザー / 取材当時
K.K
2016年入社
Fashion&Lifestyle事業部
セールスプランナー / 取材当時
K.K:その節はイタリア出張に同行させていただき、どうもありがとうございました。
T.A:どうだった?
K.K:個人的にも人生初のヨーロッパだったので、もうすべてが刺激的でした。なかでもフィレンツェで開催された世界的な展示会「PITTI UOMO(ピッティ・ウオモ)」は大変勉強になりました。ショールームに表現される世界観からして、違っていましたから。
T.A:やっぱり「百聞は一見に如かず」で、見ると聞くとでは大違いでしょう?
K.K:はい、それはもう。私たちチームが扱うブランドは、主に大手百貨店に商材を卸しているわけですが、「PITTI UOMOにおいても、このブランドは注目度が高かったですね」「ヨーロッパでも、こういった色や形、デザインが流行しそうでした」などと話すだけで、商談でのバイヤーの方々との話は一気に深まるようになりましたし、ファッションやトレンドを踏まえた自分の提案も、自信を持って語れるようになりました。
T.A:うれしいなあ。その言葉を聞きたかったんだ。ことファッションにおいては、世界の最先端を自らの目と耳で確認することで、日ごろの営業活動で語る言葉にも説得力が増すし、それが自信となって、「商い」もスケールアップしていく。児玉くんには一日も早く、ブランドマネージャーの仕事ができるまでに成長してほしいと願っています。
K.K:それにしてもなぜ、同行を許可していただけたのでしょうか?入社2年足らずでの海外出張は、さすがに社内でも前例がなかったようでしたが……。
T.A:ご褒美かな(笑)。大手百貨店内に自社ブランドである『PELLE MORBIDA』のイン・ショップをオープンさせた時、時間がないという大変な状況だったにもかかわらず、児玉くんは担当としてきっちり最後までやり遂げてくれたからね。
K.K:私にとってそのミッションは、OJTを終えた直後でもあったので、入社してから学んだことの集大成だと思って取り組みました。
T.A:諸事情により着手からオープンまで3ヶ月しかなかったんだよね。だから、施工の依頼にしても、什器の調達にしても、相見積もりを取る時間すらなく、結果としてコストも想定よりかかってしまった。それでも児玉くんは、店舗の減価償却を1年で組んで予算を組み立て、その通り1年でペイさせた。もちろん、関係各位のご協力があってのことだけど、周囲の人たちの力を借りながら、「最後まできちんとやり遂げようとした」ところを、私は大いに評価したかった。
K.K:ありがとうございます。この成果は、阿川さんが仕事をしやすい環境を整えてくれたからだと思っています。新人をはじめてお客様先に連れて行く時、ドラマなどで見る上司や先輩は決まって、「コイツ、まだまだなんで鍛えてやってください」とか言いますよね。ところが阿川さんは、「児玉はきちんと仕事をするので、安心してください」と私を紹介してくれました。そこに阿川さんとお客様との信頼関係が感じられたし、半人前でも自分を信じてくれる上司がいること、その上司の言葉を信じて私を頼りにしてくれるお客様がいることが、私にとっては大きな励みとなりました。
T.A:人材育成については、いろいろな考え方があると思うんだけど、私は入社年次に捉われることなく、経験が浅くてもどんどん仕事を振っていきたいし、当人のモチベーションとなるなら、大きな仕事だって任せたい。それはウエニ貿易の文化でもあるからね。
K.K:とはいえ、当時の私のように入社2年目の新人では、不安がありませんでしたか?
T.A:少し前なら2〜3年はしっかりと社内で研修を積ませ、そのうえで独り立ちさせるというのも、一つの方法だったかもしれない。でも、現代のようにものすごい勢いで変化する世のなかにあっては、そんなことをしていたら会社自体が時代から取り残されてしまう。若かろうが、経験が浅かろうが、次代を担う人たちの感性を活かし、その人とともに成長していくくらいのつもりでやらないかぎり、企業も生き残ってはいけないからね。逆に児玉くんは当時、不安やプレッシャーを感じた?
K.K:まったく感じなかったと言えば嘘になりますが、それでもプレッシャーよりもやりがいが勝っていました。それにプレッシャーを感じて立ち止まってしまうと、それこそ不安が募り、本当に動けなくなってしまいます。だから、いつも自分に言い聞かせていました。「不安と向き合っていても何も解決しない。とにかくやれることを一つずつ進め、最後までやり遂げよう」と。
T.A:みんなには、いつも言っているものね。「極論、事後報告だって構わない。とにかく最後までやり遂げることを意識してほしい」と。その結果、例え小さな成果しか挙げられなかったとしても、「やり遂げた」という事実は少なからず当人の自信につながるし、「やり遂げた」結果だからこそ、反省点が次に活きてくる。途中で投げ出してしまったら、お客様との信頼関係も損なわれるし、第一、当人もそこから何も学ぶことができない。
K.K:結局、実力というのは、そうした「現場」に立った回数とイコールなのだというのが、いまの私の率直な感想です。座学で知識を学び、社内のロールプレイングでシミュレーションを重ねたとしても、現場、実地に優るものはないですし、最後までやり遂げてはじめて自分の血肉となるのだということを、イン・ショップのオープンで学びました。
T.A:「現場主義」なんて言うと、何だか時代遅れの精神論のように聞こえてしまうかもしれないけれども、若いうちにどれだけ貪欲に「現場」を重ねていけるかが、後年の伸びしろを大きく左右する。怒られても経験、褒められても経験。若い人たちにはチャレンジに臆病であってほしくないし、結果を恐れず最後までやり遂げてほしいと思います。
K.K:こうして振り返ってみても、OJTが1年半というのは私にとって幸いでした。まずは1年間しっかりと学び、その後の半年間が復習期間で、学んだことの答え合わせができましたから。そしてその直後にイン・ショップのオープンを担当することになったので。
T.A:ウエニ貿易は決算が8月、そして9月から立ち上がりという事情があるからだけど、言われてみると答え合わせができる期間があるというのは、いいかもしれないね。
K.K:OJTは本当に学ぶことが多かったのですが、一番印象に残っているのは、新たに代理店を務めることになった靴の新ブランドをめぐり、阿川さんが得意先の大手百貨店の担当バイヤーの方に発した言葉でした。「このブランドに不満があるのなら、別に御社に置いてもらわなくても一向に構わない」と。先様にとって私たちは一仕入れ先にすぎないのに、そんな発言をして立場を悪くしないかと正直、ハラハラしました。
T.A:いやあ、あまり見せたくなかったシーンを、よりによって一番印象深く覚えられていたとは(笑)。あの時は年甲斐もなく熱くなってしまって面目ない。でもね、ブランドマネージャーにとって、担当するブランドは自分の娘も同然なんだ。例えば相手が大企業に勤める御曹司だったとしても、娘がぞんざいに扱われるのなら、私は決して嫁には出さない。他方、例え地味な相手であったとしても、娘のことを本当に大事にしてくれるのなら、私は喜んで娘を嫁に出す。そのほうが娘の人生が輝くからね。たしかにわれわれは児玉くんが言うように、得意先であるお客様にとっては一仕入れ先にすぎないかもしれない。だけどプライドを持って仕事をしているし、自分たちを安売りするつもりもない。児玉くんも、そのつもりで仕事をしてもらって構わないよ。
K.K:はい、承知しました。でも、このエピソードには後日談がありましたよね。『PELLE MORBIDA』でお取引のあったバッグ担当バイヤーの方の強力な後押しを受けて、「期間限定のフェアで展開し、売上がよければ考える」というお約束をご担当者からいただきました。私たちのブランドはいまでは常設となり、もっとも売れている靴の一つとなりました。
T.A:よく言われる「3C4P」、つまりCustomer、Company、Competitor、Product、Price、Place、Promotionをきちんと掘り下げていたからね。これにバッグの『PELLE MORBIDA』を通じて習得してきたノウハウを反映させれば、この靴の新ブランドも成長していくと。
K.K:この事例は私にとって「伝説」であると同時に、「ブランドマネージャーとは、こういうことなんだな」「ブランドが育つというのは、こういうことなんだな」というのを、つぶさに見ることができました。
T.A:「売れる」というのは偶然ではなく、必然だと私は考えています。仮に偶然で売れたとしても、それは長続きのしないラッキーパンチ。必然によって「売れる」ということは当然、そこに理由が存在するわけで、その理由をきちんと自分なりに解明、体得するためにも、「最初から最後までやり遂げる」ということが大事なんです。
K.K:私は阿川さんの指導、ウエニ貿易の企業文化、風土によって、同世代の友人、知人と比べても、業務の範囲は10倍くらい広いと感じています。残念ながら現時点で自分がどれくらい成長しているか定かではありませんが、それでも少なくとも入社して5年が過ぎたころには、他社の10年分の経験、成長をしていたいと思いますし、そのころには本気でブランドマネージャーになっていたいと思っています。
T.A:そうなってくれれば、私もどんどん担当ブランドを児玉くんに譲りたい。なぜかといえば、私も管理職である前に、一プレイヤーとしてこの仕事を続けていきたいからね。新しいブランドを開拓し、それを新事業として育て、自らがトレンドを生み出していくことほど、面白くてやりがいのある仕事はないから(笑)。
K.K:ですよね(笑)。「PITTI UOMO」では、私も自分なりにいろいろな可能性を肌で感じることができました。だからこそ、「やり遂げる」「コンプリートする」ということを日々の目標として積み重ね、いずれは阿川さんのように自らの手で新ブランドを開拓し、事業として育て、それを後進に譲りながら、再びハンターのごとく、新ブランドを求めて世界中を飛び回るような仕事をしていきたいと思っています。